Python|カプセル化とは?private,protectedの考え方

1. はじめに

Pythonのオブジェクト指向プログラミングにおいて重要な概念のひとつが「カプセル化」です。この記事では、Pythonにおけるカプセル化の意味や目的、privateprotectedの考え方、そしてその具体的な使い方について、初心者にもわかりやすく解説します。

Pythonでは他の言語と違ってアクセス制御の仕組みがやや緩やかですが、それでも正しくカプセル化を行うことで、クラスの設計を堅牢にし、バグを防ぎやすくすることができます。

この記事を読めば、次のようなことがわかります:

  • カプセル化とは何か?
  • privateprotectedの記述方法
  • Pythonでアクセス制御をする際の実務的な考え方

 

2. Pythonにおけるカプセル化とは?

2-1. カプセル化の基本概念

カプセル化とは、オブジェクトの内部データ(属性)や処理(メソッド)を外部から隠すことで、安全性や保守性を高める設計手法です。

Pythonでは、明示的なアクセス修飾子(privateやprotected)は存在しませんが、命名規則によってそれを表現します。

  • _変数名:protected(慣習上、継承クラスからのアクセスはOK)
  • __変数名:private(クラス外からはアクセス不可になる)

2-2. カプセル化の基本コード例

次に、カプセル化を意識したクラスの簡単な例を見てみましょう。

class User:
    def __init__(self, name, age):
        self.name = name              # 公開属性
        self._age = age               # 保護された属性(慣習)
        self.__password = 'secret'   # 非公開属性(カプセル化)

    def get_password(self):
        return self.__password        # getterでアクセス

user = User("Alice", 30)
print(user.name)            # OK
print(user._age)            # OK(可能だが非推奨)
# print(user.__password)    # NG(アクセス不可)
print(user.get_password())  # OK(メソッド経由でアクセス)

実行結果:

Alice
30
secret

__passwordには直接アクセスできませんが、get_password()メソッドを通して間接的に取得できます。これが「カプセル化」による情報の隠蔽です。

 

3. よくある使い方・応用例

3-1. setter/getterを使った安全なデータアクセス

属性の直接アクセスを避け、安全に値を取得・変更したい場合は、getter/setterメソッドを用いるのが一般的です。

class BankAccount:
    def __init__(self, balance):
        self.__balance = balance

    def get_balance(self):
        return self.__balance

    def deposit(self, amount):
        if amount > 0:
            self.__balance += amount

    def withdraw(self, amount):
        if 0 < amount <= self.__balance:
            self.__balance -= amount

このように、クラス外部からの不正なアクセスを防ぐことで、バグや意図しない変更を回避できます。

3-2. プロパティ(property)で簡潔に書く

Pythonでは@propertyデコレータを使うことで、getter/setterの処理をスマートに記述できます。

class Product:
    def __init__(self, price):
        self.__price = price

    @property
    def price(self):
        return self.__price

    @price.setter
    def price(self, value):
        if value >= 0:
            self.__price = value

p = Product(1000)
print(p.price)   # getter
p.price = 1500   # setter
print(p.price)

実行結果:

1000
1500

@propertyを使うことで、見た目は変数、裏では関数処理という柔軟なアクセス制御が可能になります。

 

4. 注意点・エラー対策

4-1. private属性にアクセスできないエラー

__passwordのようなprivate属性は、名前修飾(name mangling)されて、実際には_クラス名__変数名になります。そのため、直接アクセスしようとするとAttributeErrorになります。

user = User("Bob", 25)
# print(user.__password)  # エラーになる

# 実はこのようにアクセスできてしまう
print(user._User__password)

実行結果:

secret

このようなアクセスは可能ですが、原則として避けるべきです。コードの可読性や保守性を損ねます。

4-2. protectedはあくまで「慣習」

Pythonの_変数はprotectedを表しますが、これはアクセスを完全に制限するものではなく、「触るべきでない」ことを示すサインにすぎません。

そのため、開発チーム内で「この変数は使わない前提」という意識統一が必要です。

 

5. まとめ

今回は、Pythonにおけるカプセル化の概念と、private・protectedの使い方について解説しました。

  • カプセル化とは「内部情報を隠して、安全に操作する」設計思想
  • Pythonでは命名規則(_name, __name)でアクセス制御を行う
  • getter/setterや@propertyを使えば、柔軟に制御できる

実務では、チームメンバーが誤って重要な内部属性を変更しないように、カプセル化によって安全性を保つことが非常に重要です。

学習のコツとしては、「属性は直接触らない」「外部からはメソッドで操作する」という意識を持つこと。これにより、より堅牢で再利用性の高いコードが書けるようになります。

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